【調査レポート】ピープルアナリティクスの実施状況及び 人的資本開示に関するアンケートについて
近年、“ピープルアナリティクス”や“人的資本 ”などのワードが広く認知されるようになり、企業の人事・経営領域の課題解決においても、ピープルアナリティクスの活用が重要視されるほか、人的資本開示に関しても、政府が早ければ2023年3月期の有価証券報告書から、企業に開示を義務付ける方針を示すなど、社会的に大きな注目を集めています。
一方で、各社の人材データの分析・活用状況、並びに人的資本開示への取り組み状況 については、経営層のコミットの状況から分析・活用の目的、推進のための体制や課題、現時点でみられている効果なども多岐にわたります。
上記のような背景を踏まえ、この度、株式会社日本能率協会総合研究所では、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会の協力のもと、企業の現状における「ピープルアナリティクスの実施状況及び人的資本開示」の実態を把握するためにアンケート調査を実施いたしました。
調査結果概要
ピープルアナリティクスの実施状況について
人材マネジメント上の課題
全体としては「採用」「一般社員の育成」「配置・配属・人材ローテーション」が課題として多く挙げられている。
また従業員数が300人未満の企業では「生産性向上」が課題上位に挙がるなど、規模・業種によって課題感は異なる。
取り組み状況
ピープルアナリティクスを「当面行う予定はない」と回答したのは約6割と実施・検討が進んでいない割合が多い。既に行っている企業は全体の1割強である。
既に実施している企業を業種ごとに見ると「情報・通信」「宿泊・飲食」「製造」「証券・金融・保険」が多く、従業員数で見ると、10,000人以上が多い。
経営層の取り組み理解
推奨されていると答えた企業は約2割。取り組みが推奨されない・もしくは理解が得られていない企業が約7割となっている。
取り組みを推奨されている企業は、従業員数10,000人以上の企業が最も割合が多い。
人材データの保管・活用状況
約7割の企業で分析に活用できる情報をデータで保持していると回答。
分析の実施体制
実施体制は「人事部内にデータ分析担当者をおく」が多い。また、分析に使用するツールとしては、「エクセル・スプレッドシート・アクセス」が最も多く、
従業員数が大きくなると、「BIツール・可視化ダッシュボード」、「タレントマネジメントシステム」が導入されている。
分析の課題
ピープルアナリティクスで扱う課題では、「配置・配属・人材ローテーション」「採用」「一般社員の育成」が多く、人材マネジメント上の課題と同傾向である。
分析内容・活用情報
人材データの分析の程度としては、「単純集計」が一番多く、次いで「属性間比較」となっている。
活用情報は「属性情報」「評価情報」「給与情報」などが多い。
分析への期待・成果・課題
分析による期待では「従業員のエンゲージメント向上」ほか、「優秀人材の発掘」「退職者の低減」が上位に来ている。
一方、「従業員の満足度向上」「教育研修への活用」「労働時間削減」が分析で得られた成果の上位に挙げられる。
経営層の要求に対しては、6割が現状のピープルアナリティクスで要求を満たせていると回答。一方で実施課題としては「費用対効果が見えにくい」「専門人材の不足」が挙げられている。
人的資本経営
取り組み状況
回答したうち4割の回答企業が「取り組み中」「取り組み開始段階」と実際に取り組んでいる。
一方、1割の回答企業が「準備中」、3割が「検討中」、2割が「取り組む予定はない」と回答している。
「検討中」を選択した企業は「運輸・倉庫」「不動産・土木・建設」「公共サービス」と国内で活躍する業種が多い。
人的資本情報の集計状況に関しては、現状情報を集計していない企業が半数を占める。
情報の開示手段・実施体制
開示手段としては「統合報告書」「サステナビリティリポート」が多い。
情報の集計システムでは、「労務・給与管理システム」が最も活用され、次いで「タレントマネジメントシステム」が多い。
人的資本情報の指針・重点項目
重要な人的資本情報の指標設定に関しては、開示企業では7割が「指標を設定している」と回答した一方、集計のみ企業では5割以下にとどまる。
重視または集計している項目は開示企業では「女性管理職比率」が最も多く、「育成・研修情報」「従業員数・基本情報」「ダイバーシティ」が続く。
集計のみの企業では、「育成・研修情報」が最も多く、「リーダーシップ」「スキル・経験」「従業員数・基本情報」が次いで多い。
“As-is”と”To-be”のギャップに関しては、半数以上が「集計していない」と回答。
参考情報、推進組織
人的資本の検討を進める上で「コーポレートガバナンスコード」が最も参照されている。
また人的資本経営を推進する組織としては「人事」が圧倒的に選択され、次いで「総務」。
人的資本開示の目的
開示の目的としては「企業価値向上」が最も多く、次いで「投資家へのアピール」、「優秀人材の採用」が挙げられる。
調査概要
・調査目的
企業におけるピープルアナリティクスの実施状況及び人的資本開示の実態の把握
・調査手法
WEBアンケートによる調査
・対象
企業の人事、総務、経営企画室等に所属する課長クラス以上の管理職
・主催
日本能率協会総合研究所(JMAR) HRアナリティクス研究室
・協力
一般社団法人 ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
・調査期間
2022年12月21日~2023年1月18日
・回収数
269社
調査内容をまとめたダッシュボードは、こちらからご覧いただけます。