

社員の声が組織を動かす
ヤマトグループが取り組む社員意識調査
『Y-VOICE』の活用と成果
ヤマト運輸株式会社
ヤマト運輸株式会社
ヤマトグループは、1919年に創業し、1929年に日本初となる路線事業を開始。1976年には宅急便を発売し、日本の物流インフラを支える中核的企業へと成長を遂げてきました。
2024年度の宅配便取り扱い個数は約23億個に達し、その一つひとつを届けるセールスドライバーは全国に約5万4千人、さらに、グループ全体の社員数は約17万人を数えます。この強固な物流ネットワークと人員体制によって、同社は高品質な配送サービスを実現しています。
全国に広がる組織を適切にマネジメントするために、同社が取り組んでいるのがヤマトグループ全社員を回答対象とした
社員意識調査『Y-VOICE』(ワイボイス)です。
2025年より業務を開始した新本社ビル
ヤマトグループが毎年実施している社員意識調査『Y-VOICE』。当社の宗宮が第1回目から担当し、10年以上継続しているこの調査は、開始当初、セールスドライバーが持つ端末からでも回答できるよう熟考の上、少数の質問項目から始まった。当時はあくまで調査の基盤を整えることを優先。調査の基盤を完成させた後、社員の声を的確に捉え、改善サイクルにつなげられるよう、質問項目の内容や構成をより洗練し、現場での調査結果の可視化・活用・改善まで一貫して伴走してきた。
高橋氏:調査の目的は、社員の働きがいや働きやすさを高めるには何が必要かを把握することです。
社員の要望を実現することでエンゲージメントの向上につながり、その積み重ねがやがて企業価値の向上に寄与することを期待しています。
ヤマト運輸株式会社 高橋 幸一氏
開始当初は社内で浸透していなかった社員意識調査も、「社員の声【VOICE】を聴く」という姿勢を反映した『Y-VOICE』というヤマト運輸独自の名称を導入することにより、徐々に浸透していったという。
高橋氏:一部の社員からは『調査結果に基づいた対策を講じてほしい』といった声も聞かれます。『Y-VOICE』の回答率はおよそ9割。多くの社員の声に向き合い、どう施策に活かすのか、きちんと応えていきます。
宅配サービスを全国に展開するヤマト運輸では、多くの社員が日々現場で業務にあたっている。中でも、夏場の暑さ対策はセールスドライバーや作業職の社員にとってまさに死活問題だ。 こうした課題に対応するため、同社では冷風機やスポットクーラーの設置、シャーベット状の飲料水の配布や、塩飴・塩タブレット、経口補水液の発注環境の整備など、さまざまな熱中症対策を行っている。これまで台車や自転車で集配業務を行うセールスドライバーを対象に「ファン付きベスト」を貸与してきたが、2025年6月からはトラックで集配業務を行うセールスドライバーにも貸与を拡大。熱中症リスクの軽減を目的とした取り組みを本格化させている。
高橋氏:近年の異常な暑さに対する社員の声は以前から『Y-VOICE』で挙がっていました。適宜対策をとっていましたが、「ファン付きベスト」貸与対象の拡大もその一つです。今後も社員の声に耳を傾け、適宜必要な対策を講じていきます。
同社では、調査結果をもとにさまざまな施策を検討しているが、最終的な実施の後押しとなるのは、社員意識調査『Y-VOICE』で寄せられた“社員の声”だ。
高橋氏:3年前の『Y-VOICE』の結果では「上司マネジメント」に課題があることが分かりました。「上司が相談にのってくれない」、「情報を共有してくれない」といった声です。分析結果によると「上司マネジメント」は職場の心理的安全性を高めるための重要な要素で、社員の働きがいや働きやすさに直結します。そこで、人事施策として管理者の教育を強化しました。『Y-VOICE』のフィードバックを行う際にもその点を強調し、管理者に自覚してもらうように工夫したところ、「上司マネジメント」に関する項目が少しずつ改善し、2年間で肯定割合の数値が約2割上昇しました。『Y-VOICE』には社員の声、社員の想いが詰まっています。
まさに社員意識調査が『声を聴く』、『声を届ける』機会になっている。
株式会社KNOT DATA 宗宮 亮
ヤマト運輸は全国に拠点を展開し、社員は都市部から地方まで、さまざまな地域・環境で勤務している。そのバックグラウンドの多様さゆえに、『Y-VOICE』の結果をただ提示するだけでは、現場における『Y-VOICE』の結果の適切な解釈や効果的な活用方法が定まらず、結果として改善活動が十分に推進されないことがある。
当社は、調査結果が現場の改善に繋がるよう、表現方法やフィードバック方法について継続的にご提案活動を行い、現場目線のより効果的な活用方法を共に作り上げてきた。
山邉氏:フィードバック方法を模索する中、一目で自身の現場がどういう状態かわかるようにしたいと考えていました。『ピクトグラムを用いて組織の特徴を表現する』、『スコアは100点法で表現する』などのご提案をいただきました。直感的に判断できるよう『お天気マーク(晴れ・曇り・雨等)』で組織の状況を表現した時期もありましたが、今は階層単位でランク付けを行い、シンプルな1枚に結果をまとめて拠点ごとにフィードバックしています。
ヤマト運輸株式会社 山邉 美子氏
当社はこれまで、『Y-VOICE』の結果を「Tableau」で可視化し、データを効果的に活用いただくための支援を行ってきた。現在は、現場のIT環境の制約も踏まえ、再度紙での展開を含め、より現場に浸透する最適なフィードバックの形を模索している。「社員に伝わり、使えること」に重きを置いた取り組みを続けることで、『Y-VOICE』は現場に根付き、発展してきた。
高橋氏:『Y-VOICE』が浸透したおかげで他部門からも、『『Y-VOICE』のデータを活用したいので相談に乗ってほしい』という声が寄せられるようになりました。調査結果の活用にも関心が高まっていると感じています。
岩永氏:本社各部からの問い合わせや依頼も多く、社内の各所で指標として扱われていることを実感しています。弊社の拠点はそれぞれ特色があるので、社員一人ひとりの声をそれぞれの拠点で活かし、より良い方向へ向かうための指標として活用してほしいと思っています。
『Y-VOICE』の結果の共有は、現場での新たな動きを生み出している。その中心にあるのは、職種、雇用形態を問わず、社員が率直に意見を交わす、さまざまな形式のディスカッションだ。
高橋氏:現場へのフィードバック後は、調査結果を用いて社員と対話をする『職場ディスカッション』を実施しています。 『職場ディスカッション』にはいくつか種類があります。
例えば、管理職である営業所長が社員に対して自組織の調査結果を共有し、その結果をもとに職場で抱えている課題やその解決策について話し合う、現場主導型のディスカッションです。これは、話し合いを通して皆でアクションプランを策定し、実際の改善活動へつなげていくという組織開発を意識した取り組みです。
他にも、各エリアの経営責任者である主管支店長と社員が直接対話する場も設けています。各営業所の代表社員が主管支店長と職場環境などについて意見を交わします。主管支店長は、現場の実情や課題を直接聞き、社員の声を経営に活かし、社員も主管支店長から方針や取り組み内容を直接聞くことができる良い機会となっています。
山邉氏:社員が主管支店長と直接対話する機会は多くないので、「このような場を通して改善施策や将来の話を直接聞けたことがとても貴重な経験になった」、「今後も継続してほしい」、「より多くの仲間にも参加してほしい」という感想を沢山もらっています。
ヤマト運輸株式会社 岩永 志帆氏
『Y-VOICE』の結果は経営層からも非常に注目されている。「社員の声」という貴重な本音に耳を傾け、真摯に受け止めている。
高橋氏:『Y-VOICE』の結果は経営層に報告しており、有価証券報告書や統合レポートなど対外的にも公開しています。経営層はもちろん、株主や投資家の方も、高い関心を持っています。
結果のスコアだけでなく、なぜそのような結果となったのか、施策は効果があったのか、今後は何の課題に対してどのような施策を打つのか、調査項目の分析と仮説に基づく施策・検証を繰り返します。
膨大な調査結果データを読み解くことは非常に難易度が高く、最近ではAIを活用するなど、さまざまな分析を試みていますが、まだまだ課題は山積みです。より専門的な知識が必要だと感じているので、今後もKNOT DATAさまには、最新のトレンドを踏まえた、より効果的な分析手法やフィードバック方法のご支援を期待しています。
写真左から、ヤマト運輸 高橋 幸一 氏、岩永 志帆 氏、山邉 美子 氏、KNOT DATA 宗宮 亮
会社名: | ヤマト運輸株式会社 |
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設立: | 2005年3月 |
従業員数: | 158,295名(2025年3月31日時点) |
事業内容: | 貨物自動車運送事業、第一種貨物利用運送事業、第二種貨物利用運送事業、倉庫業、港湾運送業など物流事業全般および関連事業 |
公式サイト: | https://www.kuronekoyamato.co.jp/ |